はじめに

最近、ニュースなどで「高齢者が亡くなったあと、ペットの引き取り手が見つからない」という話題を目にすることが増えています。

このような話題では、「高齢者がペットを飼うのは無責任だ」「家族が引き取らないのは冷たい」といった強い意見が向けられることもあります。しかし、この問題は誰かを非難して終わる話ではありません。

単身で暮らす高齢者にとって、ペットは家族であり、日々の生活を支え、生きる張り合いとなる存在です。一方で、飼い主が亡くなったあと、住環境や健康、仕事や経済的事情などから、ペットを引き取ることができない親族の立場も、現実として理解されるべきものです。

そこで近年注目されているのが「ペット後見」という考え方です。これは、高齢者が安心してペットと暮らし、万一のときにはペットが行き場を失わずにすむよう、事前に備えておく仕組みです。

この記事では、高齢者や家族を責めることなく、ペット後見の考え方と具体的な進め方を、やさしく整理して解説します。

この記事でわかること

  • ペット後見とはどのような考え方・仕組みなのか
  • 高齢者が亡くなったあと、ペットをめぐって起こりやすい現実
  • ペット後見の手続きを、どのような流れで考えればよいか

わたしも高齢の母が猫を飼っており、この猫のことを案じています。現在は娘である私と夫が同居しているので、この点は安心しているようです。一方で単身の高齢者の方は心配が尽きないと思い、いろいろ調べ記事にまとめました。


ペット後見とは何か

ペット後見とは、飼い主に万一のことがあった場合に、そのペットが安心して暮らし続けられるよう、あらかじめ世話をする人やお金の管理方法を決めておく仕組みのことです。

人の「成年後見制度」とは異なり、法律上に明確な制度名があるわけではありません。ペットは法律では「物」として扱われるため、人のように後見人を立てることはできないからです。

そのため実際には、

  • 契約
  • 信託
  • 遺言

といった仕組みを組み合わせて、「ペットのための後見的な体制」を整えることになります。


なぜ高齢者にとってペット後見が必要なのか

高齢になると、誰にでも次のようなリスクが現実的になります。

  • 入院や施設入所
  • 認知症などで判断力が低下する
  • 突然の逝去

これは高齢者に限った話ではありませんが、単身で暮らしている場合、その影響はより大きくなります。
ペットと暮らす高齢者の多くは、「もし自分に何かあったら、この子はどうなるのだろう」という不安を、心のどこかで抱えています。

ペット後見は、その不安を少しでも軽くし、高齢者が安心してペットと暮らし続けるための備えでもあります。


飼い主が亡くなったあと、ペットはどうなるのか

何の準備もないまま飼い主が亡くなった場合、ペットの行き先は周囲の人に委ねられます。

親族や知人が引き取れるケースもありますが、現実には次のような事情で難しい場合も少なくありません。

  • 住環境の制約(賃貸住宅・ペット不可)
  • 仕事や家庭の事情で世話ができない
  • アレルギーや健康上の理由
  • 経済的な負担

「引き取れない」という選択は、必ずしも冷たさや無関心から生まれるものではありません。
それでも行き場が決まらないペットが出てしまう現実があり、その負担は、残された家族にとっても大きな心の重荷になります。


高齢者がペットを飼うことは無責任なのか

「年を取ったらペットを飼うべきではない」という意見を目にすることがあります。

確かに、将来を何も考えずに飼うことは望ましいとは言えません。しかしそれは、高齢者に限った問題ではありません。
単身の高齢者にとって、ペットは家族であり、話し相手であり、生活のリズムを保つ大切な存在です。ペットがいたからこそ、毎日を前向きに生きることができたという人も少なくありません。

また、ペットはただ守られる存在ではなく、飼い主の孤独や不安に寄り添い、人生の後半を支えてきた存在でもあります。

だからこそ、必要なのは「飼うな」という否定ではなく、「どう守るか」という視点です。


ペット後見の具体的な仕組み

ペット後見は、特別な制度名があるわけではなく、いくつかの仕組みを組み合わせて成り立っています。
大切なのは「完璧に整えること」ではなく、現実的にできる準備を一つずつ積み重ねることです。

ここでは、ペット後見を考えるうえで押さえておきたいポイントを、少し詳しく見ていきます。

  1. 世話をする人(引き受け先)を決めておく
  2. 飼育費・医療費をどう確保するか
  3. ペットの情報をまとめておく

 

世話をする人(引き受け先)を決めておく

まず考えるべきなのは、飼い主に万一のことがあった場合に、ペットの世話を引き受ける人です。

候補としては、

  • 親族
  • 友人・知人
  • 第三者や団体

などが考えられます。

ここで重要なのは、「必ず引き取ってもらう」と一方的に決めるのではなく、
無理のない範囲で話し合い、合意を得ることです。

ペットの年齢や性格、必要な世話の内容によって、負担の大きさは変わります。
短期間の預かりなのか、終生飼育なのかといった点も含め、できるだけ具体的に共有しておくことが、後のトラブルを防ぎます。

飼育費・医療費をどう確保するか

ペットを引き取る側が、最も不安に感じやすいのが費用の問題です。

食事代や日常的なケアに加え、

  • 高齢ペットの医療費
  • 介護が必要になった場合の費用

など、将来的な負担も考えておく必要があります。

ここで大切なのは、必ずしも特別な信託銀行を使わなければならないわけではないという点です。

もっとも現実的な方法としては、

  • ペット後見のための資金を、特定の銀行口座に分けて預けておく
  • そのお金を「ペットの飼育・医療費のために使ってほしい」と、遺言書で明確にしておく

という形が考えられます。

この場合、口座の名義は通常どおり飼い主本人名義で問題ありません。重要なのは、
誰が・どのお金を・何のために使うのかを、書面ではっきりさせておくことです。

あわせて、ペットを引き取る人(世話をする人)を遺言の中で指定し、その人に飼育費として託す形にしておくと、より安心です。

資金に余裕がある場合には、

  • 家族信託
  • ペット信託
  • ペット後見を扱う団体への預託

といった方法を検討することもできますが、
一般的な高齢者にとっては、預貯金と遺言を組み合わせた方法が、現実的で始めやすい選択肢と言えるでしょう。

ペットの情報をまとめておく

ペット後見を円滑に進めるためには、ペットに関する情報を整理しておくことも大切です。

  • 年齢・健康状態
  • 食事の内容や生活習慣
  • 性格や苦手なこと
  • かかりつけの動物病院

これらを簡単にまとめておくだけでも、引き取ったあとに戸惑う場面を減らすことができます。特に高齢ペットの場合、これまでの経過を知ることは、適切なケアにつながります。

書面に残すことの重要性

話し合いだけで済ませてしまうと、時間の経過とともに認識のズレが生じることがあります。

そのため、

  • 契約書
  • 公正証書
  • 遺言書

といった形で、内容をできるだけ書面に残しておくことが望ましいです。

書面にしておくことで、ペットの世話を引き受ける人だけでなく、周囲の親族にとっても判断の拠り所になります。

完璧を目指さず、見直しを前提に考える

ペット後見は、一度決めたら終わりではありません。

  • ペットの年齢や健康状態
  • 飼い主自身の体調
  • 引き受け先の事情

は、時間とともに変化します。

最初から完璧な形を目指すよりも、定期的に見直す前提で、今できる準備をしておくことが現実的です。小さな備えの積み重ねが、ペットと人、どちらにとっても安心につながります。

 


ペット後見は誰のための制度か

ペット後見は、飼い主だけのための制度ではありません。

  • ペットが安心して暮らすため
  • 残された親族が悩まなくてすむため
  • 飼い主自身が安心して日々を過ごすため

それぞれを守るための仕組みです。

高齢者を最後まで支えてくれたペットが、飼い主の死後も穏やかに生きていけるように。
それは責任の押し付けではなく、感謝と愛情の延長だと言えるでしょう。


ペット後見をサポートする会社・団体について

近年では、ペット後見やペット信託を専門に扱う会社や団体も登場しています。

こうしたサービスでは、

  • ペットの引き取り先の調整
  • 飼育費や医療費の管理
  • 飼い主が亡くなったあとの事務手続き

などを、第三者の立場でサポートする仕組みが用意されています。

一方で、ペット後見は公的に統一された制度ではないため、サービス内容や費用、責任の範囲は会社ごとに大きく異なります。
そのため、「すべてを任せれば安心」と考えるのではなく、内容をよく理解したうえで、慎重に検討することが大切です。

家族や知人に頼れない場合の選択肢の一つとして、こうした会社や団体の存在を知っておくとよいでしょう。


ペット後見の手続きはどう進めればいいか

ペット後見は、難しい手続きを一気に行う必要はありません。次のような流れで考えていくと、イメージしやすくなります。

  • ステップ1:ペットの情報を書き出す
  • ステップ2:世話を頼めそうな人を考える
  • ステップ3:お金の準備を考える
  • ステップ4:専門家に相談する
  • ステップ5:書面に残し、定期的に見直す

 

ステップ1:ペットの情報を書き出す

まずは、ペットに関する基本的な情報を整理します。

  • 年齢・健康状態
  • 食事や生活の習慣
  • かかりつけの動物病院

これは、引き取る人にとっても大切な資料になります。

ステップ2:世話を頼めそうな人を考える

次に、万一のときにペットの世話を引き受けてもらえそうな人を考えます。

  • 親族
  • 友人・知人
  • 第三者や団体

必ずしもその場で決める必要はありません。
「誰にも相談していない状態」から一歩進むことが大切です。

ステップ3:お金の準備を考える

ペットを引き取る側が不安を感じやすいのが、費用の問題です。

  • 飼育費
  • 医療費
  • 高齢ペットの場合の介護費用

どの程度準備できるかを、現実的に考えておくことで、
引き受けてもらいやすくなります。

ステップ4:専門家に相談する

内容がある程度固まったら、

  • 司法書士
  • 弁護士
  • ペット後見を扱う団体

などの専門家に相談します。

遺言や契約、公正証書など、自分の状況に合った方法を一緒に検討してもらうことができます。

ステップ5:書面に残し、定期的に見直す

準備が整ったら、内容を必ず書面に残します。また、

  • ペットの年齢
  • 自分の健康状態
  • 周囲の環境

は時間とともに変わります。

一度決めて終わりではなく、定期的に見直すことも大切なポイントです。


よくある質問(Q&A)

Q1:ペット後見は、必ず専門家に相談しないとできませんか?

いいえ、最初から必ず専門家に相談しなければならないわけではありません。まずは、

  • ペットを誰に託したいか
  • どの程度の飼育費を残したいか

といったことを、自分なりに整理するだけでも十分な第一歩です。

ただし、遺言書の作成や契約として形にする場合は、司法書士や弁護士などの専門家に一度相談しておくと安心です。「何もしない」よりも、「簡単でも備える」ことが大切だといえるでしょう。

Q2:ペット後見には、どれくらいの費用がかかりますか?

ペット後見にかかる費用は、選ぶ方法によって大きく異なります。

遺言書を作成し、預貯金を飼育費として残す方法であれば、比較的負担を抑えることができます。一方、信託やペット後見を扱う会社・団体を利用する場合は、初期費用や管理費用がかかることもあります。

大切なのは、無理のない範囲で続けられる方法を選ぶことです。高額な仕組みを選ばなければならないわけではありません。

Q3:ペット後見の内容は、あとから変更できますか?

はい、変更できます。

ペットの年齢や健康状態、自分自身の体調、引き取り先の事情などは、時間とともに変わるものです。そのため、ペット後見は一度決めて終わりではなく、見直しを前提に考えることが大切です。

状況が変わったときには、遺言書を書き直すなどして、内容を調整することができます。


まとめ

高齢者とペットの問題は、誰かを責めて解決するものではありません。

ペット後見は、

  • 高齢者が安心してペットと暮らすため
  • ペットが行き場を失わないため
  • 周囲の人が苦しまないため

の「やさしい備え」です。

元気なうちに少しだけ考えておくことが、飼い主とペット、そして残される人すべてを守ることにつながります。
ペットを家族として大切に思う気持ちを、最後まで形にする選択肢の一つとして、ペット後見を知っておいて損はありません。