はじめに

介護の現場で働いていると、昨日まで一緒にシフトに入っていた人が、ある日を境にいなくなってしまうことがあります。

そのたびに、「仕事ができなかったのかな」「向いていなかったのかな」と考えてしまいがちですが、実際に現場を見ていると、それだけでは説明できないケースが多くあります。

辞めていった人たちに共通していたのは、能力の問題ではないことがほとんどでした。

この記事では、介護士として現場を経験した立場から、実際に辞めていった人たちに多かった行動や考え方のパターンを整理します。

自分を責めてしまう人だけでなく、職場環境や腰痛など体調面を理由に見切りをつけた人も含めて、「辞める」という判断の背景を見ていきます。

この記事でわかること

  • 辞めていった介護士に共通して見られた行動・考え方
  • 自責・他責・体調面など、辞め方の違い
  • 仕事ができる・できないとは別の視点

辞めていった人たちを振り返って気づいたこと

介護の現場を去っていった人たちは、新人ばかりではありませんでした。年齢も性別もバラバラで、仕事が早い人もいれば、利用者さんから好かれていた人もいます。

それでも、辞める直前の様子を思い返すと、共通する小さなサインがありました。

  • どこか一人で抱え込んでいる
  • 周囲と必要以上に距離を取っている
  • 「大丈夫です」が口癖になっている

致命的なミスをしたわけでも、大きなトラブルを起こしたわけでもない。それなのに、ある日を境に突然来なくなる。

その背景には、能力とは別の「向き合い方」の問題がありました。


介護士として辞めていく人に共通する特徴

人間関係を「仕事とは別」と切り離して考えていた

辞めていった人の中には、「仕事さえきちんとやっていればいい」と考えている人が少なくありませんでした。確かに、介護は専門職であり、業務を正確にこなすことは大切です。

しかし、介護現場は一人で完結する仕事ではありません。申し送り、フォロー、声かけが前提のチームワークで成り立っています。

人間関係を軽視していたわけではなくても、「仕事と人間関係を切り離して考える姿勢」が、結果的に孤立を生みやすくなっていました。

最初の期待値が高すぎた

「介護の仕事はもっとやりがいがあると思っていた」「人の役に立っている実感があるはずだった」こうした理想を強く持っていた人ほど、現実とのギャップに苦しんでいました。

介護の現場は、きれいごとだけでは回りません。排泄介助、急な対応、時間に追われる業務が日常です。

理想が高いこと自体は悪くありませんが、期待値が高すぎると、失望も大きくなります。
「思っていた仕事と違う」と感じた瞬間から、心が離れていく人も多くいました。

困っても相談しない・弱音を出さない

真面目で責任感が強い人ほど、周囲に頼ることをためらいます。

「こんなことで聞いてはいけない」
「自分で何とかしないといけない」

そうやって一人で抱え込んだ結果、余裕がなくなり、ミスが増え、さらに相談しづらくなる。

皮肉なことに、相談しない姿勢は評価を上げるどころか、危うさとして見られることもあります

続いている人ほど、早い段階で「できません」「教えてください」と口にしています。

注意や指摘を人格否定として受け取ってしまう

介護現場は忙しく、言い方がきつくなる場面もあります。

「さっきの対応、違うよ」
「次はこうして」

こうした指摘を、業務上の指導として受け止められず、「自分が否定された」と感じてしまうと、現場に居場所がなくなっていきます。

辞めていった人の中には、注意を受けるたびに自信を失い、萎縮してしまう人もいました。指導と人格否定は別物ですが、心に余裕がないと、その区別がつかなくなってしまいます。

一人で抱え込んで限界まで我慢してしまう

「迷惑をかけたくない」
「もう少し頑張れば慣れるはず」

そう考えて我慢を重ねた結果、ある日突然、心が折れてしまう。辞める直前まで、周囲は異変に気づかないことも多くあります。

限界まで我慢する姿勢は美徳のように見えますが、介護の現場では逆効果になることも少なくありません。


共通する特徴以外の辞める理由は?

介護の現場で辞めていく人を見ていると、「自分で抱え込むタイプ」だけが理由ではないことにも気づきます。

実際には、

  • 職場や会社の体制に限界を感じた人
  • 体の不調、とくに腰痛をきっかけに見切りをつけた人

こうしたケースも少なくありません。

どちらが正しい、間違っているという話ではなく、辞め方のタイプが違うだけです。

会社や職場の問題を強く感じて辞める人

「この職場はおかしい」「改善される気がしない」そう感じながら働いている人も、介護現場には一定数います。

人手不足が慢性化し、教育やフォローが機能していない職場では、個人の努力ではどうにもならない場面もあります。このタイプの人は、周囲から見ると「不満が多い人」「会社や他の同僚の責任にする人」と受け取られがちです。

しかし実際には、

  • 環境そのものに限界を感じている
  • 改善の見込みがないと判断している

という、ある意味で冷静な見切りの場合もあります。

結果として周囲と距離ができ、居づらくなって辞めていく――そこに能力の問題があるとは限りません。

腰痛をきっかけに「合わない」と判断する人

介護の仕事を続ける中で、腰を痛める人は少なくありません。

正しい介助を心がけていても、

  • 利用者さんとの体格差
  • 突発的な動き
  • 人手不足による無理な対応

こうした要因が重なると、腰への負担は避けられません。一度痛めると慢性化しやすく、日常生活にも影響します。この段階で「この仕事は自分の体には合わない」と判断するのは、決して逃げではありません。

無理を重ねて働き続けるよりも、早めに見切りをつけるほうが、長い目で見て自分を守る選択になることもあります。


辞める理由を整理すると見えてくること(整理表)

ここまで紹介してきた内容を、評価や優劣をつけずに整理すると、次のようになります。

辞めるきっかけ 現場でよくある状況 補足ポイント
抱え込みすぎ 相談できず限界まで我慢 能力不足ではなく、真面目さが原因の場合も多い
職場環境 人手不足・教育体制が整っていない 個人の努力では変えにくいこともある
腰痛・体調 慢性化・再発を繰り返す 無理を続けない判断も一つの選択

この表は「向いている・向いていない」を決めるものではありません。

辞めた理由は人それぞれであり、どのケースも仕事ができる・できないとは直接関係しないことが多い、という整理です。


仕事ができる・できないは本当の理由ではなかった

実際に辞めていった人の中には、仕事が早く、有能だった人もいます。一方で、最初は失敗ばかりでも、長く続いている人もいます。この違いを分けていたのは、完璧さではありませんでした。

  • できないことを共有できる
  • 早めに助けを求められる
  • 自分を過度に責めない

こうした姿勢を持つ人のほうが、結果的に現場に残っています。


それでも介護の仕事が向いていないわけではない

辞めたからといって、介護職に向いていないと決めつける必要はありません。職場の雰囲気、人員配置、教育体制との相性は大きく影響します。一つの現場が合わなかっただけで、介護そのものを否定する必要はありません。

見切りをつけることは、逃げではなく、自分を守る選択でもあります。


これから介護職を続けたい人へ

現場で長く続いている人たちが共通してやっていることは、特別なことではありません。

  • 早めに聞く
  • できない前提で動く
  • 人に頼ることも仕事の一部と考える

これだけで、介護の仕事は続けやすくなります。


よくある疑問(Q&A)

Q1. 介護の仕事を辞めたくなるのは、甘えでしょうか?

A.
甘えとは一概には言えません。介護の仕事は体力的・精神的な負担が大きく、続けるかどうか迷うのは自然なことです。大切なのは「なぜ辞めたいと感じているのか」を整理し、自分を責めすぎないことです。

Q2. 会社や職場に不満を感じるのは、他責になりますか?

A.
人手不足や教育体制など、個人では変えにくい問題が職場側にあるケースも少なくありません。すべてを自分の責任にする必要はありませんが、改善が見込めない場合は環境を変えるという選択も一つの判断です。

Q3. 腰痛が理由で介護職を離れるのは逃げですか?

A.
腰痛は介護職に多い現実的な問題で、無理を続けることで悪化することもあります。体との相性を考えて仕事を見直すことは、逃げではなく自分を守る判断といえます。


まとめ

介護の現場で辞めていく人を振り返ると、その理由は一つではありません。

  • 自分を責めて抱え込みすぎた人
  • 職場や会社の体制に限界を感じた人
  • 腰痛など体との相性で見切りをつけた人

こうした違いはあっても、共通しているのは能力の問題で辞めたわけではないという点です。

介護の仕事を続けるかどうかは、根性や覚悟だけで決められるものではありません。環境や体の状態、自分の考え方との相性を含めて判断するものです。いま迷っている人は、「向いていない」と決めつける前に、何がつらいのかを整理してみてください。

辞める・続けるのどちらを選ぶにしても、それは自分を守るための判断であり、間違いではありません。

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