「親の介護がつらい」と感じるのはおかしくない|家族の気持ちと現場の話
はじめに
親の介護をしていて、「つらい」「しんどい」「もう限界かもしれない」と感じたことはありませんか。
そんな気持ちを抱いた瞬間に、
「こんなふうに思う自分は冷たいのではないか」
「親を大切にできていないのではないか」
と、自分を責めてしまう人は少なくありません。
結論から言えば、親の介護がつらいと感じるのは、とても自然なことです。
それは介護がうまくいっていないからでも、人として欠けているからでもありません。
この記事では、介護のやり方や制度の話ではなく、
**家族として介護に関わる人の「感情」**に焦点を当てて、現場でよく見てきた実情を交えながら整理していきます。
この記事でわかること
- なぜ親の介護は、ここまで気持ちを追い込むのか
- 家族が無意識に自分を苦しめてしまう考え方
- 気持ちを壊さずに介護と向き合うための視点
親の介護が「特別につらくなる」本当の理由
相手が「親」であることから逃げられない
介護がつらくなる一番の理由は、相手が「親」であるという事実から逃げられないことです。
他人の介護であれば、ある程度の距離を保ち、役割として割り切ることができます。
しかし親の場合、そうはいきません。介護をしているつもりでも、実際には介護と親子関係が同時に動いてしまうからです。
子どもの頃の記憶、褒められた経験、叱られた経験、我慢してきた気持ち。
そうしたものが、介護の場面で突然よみがえり、今の状況と重なってしまうことがあります。
それは本人の意思とは関係なく起こります。
愛情・義務感・罪悪感が同時に存在する
親の介護では、
- 大切にしたい
- できることはしてあげたい
- でも正直つらい
という相反する感情が、同時に存在します。この矛盾が、家族を強く消耗させます。
「つらいなら、距離を取ればいい」と頭ではわかっていても、「それは親不孝ではないか」という罪悪感が邪魔をします。
多くの人が、優しさと苦しさの両方を抱えたまま耐え続けてしまうのです。
家族が自分を追い詰めてしまう典型パターン
「いい娘・いい息子でいよう」としすぎる
現場で特につらそうなのは、とてもまじめで、責任感の強い人です。
- 自分がやらなければ
- 弱音を吐いてはいけない
- 手を抜いてはいけない
こうした考えを強く持っている人ほど、誰にも頼れず、気づかないうちに追い込まれていきます。
そして限界が近づいてから、「どうしてこんなに苦しいのかわからない」と感じることがあります。
親の変化をすべて自分の責任にしてしまう
親が弱っていく姿を見るのは、とてもつらいものです。
認知症の進行、性格の変化、できていたことができなくなる現実。
それらを目の前で見続けるうちに、「自分の関わり方が悪いのではないか」と無意識に自分を責めてしまう人もいます。
しかし、老いや病気は、誰かの努力だけで止められるものではありません。そこに家族がすべて責任を背負う必要はないのです。
「つらい」と感じるのは、親を大切にしていないからではない
感情と行動は別物
介護の現場では、「ちゃんとやっている人ほど、苦しんでいる」という場面を何度も見てきました。
きちんと介護をしていても、感情が追いつかないことはあります。
それは矛盾でも、失敗でもありません。
人の感情は、正しさだけでは整理できないものだからです。
苦しさは人間関係の自然な反応
親子関係は、何十年も続いてきた人間関係です。
そこに介護という重たい役割が加われば、感情が揺れるのは自然な反応です。
苦しさを感じること自体が、人としておかしいのではなく、人としてちゃんと反応している証拠とも言えます。
介護の現場から見て、家族に伝えたい最低限のこと
家族が壊れてしまうケースは珍しくない
現場では、限界まで我慢してしまった家族が、心身ともに崩れてしまうケースも少なくありません。
「もっと早く助けを求めていれば」と後から振り返る場面も多くあります。
距離を取ることは「放棄」ではない
介護サービスを使うこと、一時的に距離を取ることは、決して冷たさや逃げではありません。それは、介護を続けるための調整です。
家族が壊れてしまっては、結果的に誰も守れなくなってしまいます。
介護の現場で働く側の視点については、下記の記事で詳しくご紹介しています。特に立ち位置の話は参考になると思います。
気持ちが限界に近づいたときの考え方
「つらい」と言葉にしていい
まず大切なのは、自分がつらい状態にあることを認めることです。
誰かに話せなくても、心の中で言葉にするだけでも構いません。
感情を無視し続けることが、一番危険です。
逃げ道を最初から用意しておく
介護には、人・時間・サービスの逃げ道が必要です。
完璧にやろうとしないこと。
最初から余白を残しておくこと。
それは甘えではなく、長く続けるための工夫です。
それでも自分を責めてしまう人へ
親の介護がつらいと感じるのは、親をどうでもいい存在だと思っているからではありません。
むしろ、大切に思っているからこそ苦しくなるのです。
その矛盾を抱えながら向き合っていること自体が、あなたの人間性を表しています。
よくある質問(Q&A)
Q1. 親の介護がつらいと感じるのは、冷たい人間だからですか?
いいえ、そうではありません。
親の介護がつらくなるのは、親子という長い関係性があるからこそ起こる自然な感情です。
大切に思っているからこそ、苦しさも生まれます。
Q2. つらい気持ちを感じながら介護を続けても大丈夫でしょうか?
大丈夫です。
多くの家族が、矛盾した気持ちを抱えながら介護に関わっています。
感情が揺れることと、介護ができているかどうかは別の問題です。
Q3. 限界を感じたら、距離を取ってもいいのでしょうか?
距離を取ることは、放棄ではありません。
介護を続けるための調整であり、家族を守る選択でもあります。
一人で抱え込まず、余白をつくることが大切です。
まとめ
- 親の介護がつらくなるのは、感情の問題であり能力の問題ではありません
- 「いい家族でいなければ」という思い込みが、人を追い込みます
- 距離・助け・言葉にすることは、逃げではなく調整です
今日すぐに何かを変えなくても構いません。
まずは、自分を責めすぎていないかそれだけを、少しだけ見直してみてください。
