はじめに

親の介護が始まったとき、多くの人が最初に感じるのが「これ、何年続くんだろう…」という不安です。仕事や家庭のことを考えるほど、終わりが見えない状況は心を重くします。

結論から言うと、親の介護に「何年」と断定できる答えはありません。ただし、公的データや現場の実感から、ある程度の目安や傾向は見えてきます。制度や段階を知ることで、漠然とした不安を具体的な見通しに変えることは可能です。

この記事では、次の点を整理します。

  • 親の介護が続く平均的な年数の目安
  • 介護が長期化しやすいケースと、比較的見通しが立ちやすいケース
  • 終わりが見えない不安との現実的な向き合い方

親の介護は平均で何年続くのか

公的データから見る介護期間の目安

厚生労働省の調査などを見ると、要介護認定を受けてから亡くなるまでの期間は、平均でおよそ4〜5年程度とされることが多いです。ただし、これはあくまで全体平均であり、個人差が非常に大きい数字です。

要介護度別に見ると、傾向は次のようになります。

  • 要介護1〜2:数年単位で続くケースが多い
  • 要介護3〜5:比較的期間が短くなることもあるが、医療的ケアが増える

数字だけを見ると「思ったより短い」と感じる人もいますが、実際の介護は要介護認定前の段階から始まっていることも多く、体感としては長く感じやすい点に注意が必要です。

実際の現場感覚としての「よくある年数」

介護の現場や家族の体験談を総合すると、よく聞かれるのは次のようなケースです。わたしも特養で働いた経験がありますが、納得できるデータだと思います。

  • 2〜3年で区切りがつくケース(病気の進行が比較的早い場合など)
  • 5年以上続くケース(認知症や在宅介護が中心の場合)

ただし、ここで注意したいのは、多くの人が「要介護認定を受ける前」から、すでに介護に近い状態を経験しているという点です。
通院の付き添い、物忘れへの対応、金銭管理のサポートなどは、制度上は介護でなくても、生活の中では十分に負担になります。
そのため、数字で見る年数よりも、体感としては「ずっと続いている」「思った以上に長い」と感じやすくなるのです。

つまり、「何年続くか」は、介護の原因や選択だけでなく、どこからを介護と捉えるかによっても大きく変わるというのが現実です。


介護が長引きやすいケースの特徴

これも介護士としてご家族に接した経験をまとめた意見になりますが、次の3つが介護が長引きやすいケースになります。

  • 認知症が主な原因の場合
  • 在宅介護を続ける選択をした場合
  • 家族だけで抱え込んでいる場合

 

認知症が主な原因の場合

認知症は進行がゆっくりで、身体機能が保たれる期間も長くなりやすいため、介護期間が長期化しやすい傾向があります。特に初期から在宅で支える場合、「終わりが見えない」と感じやすくなります。

在宅介護を続ける選択をした場合

住み慣れた家で過ごせるメリットがある一方、家族の負担は長期間にわたり積み重なります。小さな介助が毎日続くことで、年数以上に長く感じることも少なくありません。

家族だけで抱え込んでいる場合

サービス利用が少なく、家族が中心となって介護していると、疲労や不安が蓄積しやすくなります。その結果、「まだ終わらないのか」という感覚が強まります。

ただし、これは「家族だけで頑張ったから介護が長引いた」という意味ではありません。負担を分散できない状況が続くことで、介護そのものよりも、つらさのほうが大きく感じられてしまうという側面があります。


比較的、期間の見通しが立ちやすいケース

介護が長引きやすいケース/見通しが立ちやすいケースの違い(比較表)

観点 長引きやすいケース 見通しが立ちやすいケース
主な原因 認知症・慢性疾患 病気の進行が比較的明確
介護の場所 在宅介護が中心 施設・在宅+施設の併用
家族の関わり 家族が主に担う 専門職と役割分担
体感する期間 非常に長く感じやすい 心理的な区切りがつきやすい
不安の正体 終わりを想像しにくい 次の段階が見えやすい

 

施設入所を早めに検討した場合

施設に入所すると、介護の主な担い手は専門職になります。家族は関わり方が変わるため、「介護が続いている」という感覚が軽くなり、心理的な区切りがつきやすくなります。

医療・介護サービスをフル活用している場合

訪問介護、デイサービス、ショートステイなどを組み合わせることで、負担が分散されます。結果として、長期化しても消耗しにくく、見通しを持ちやすくなります。


介護の「終わり」はどうやって訪れるのか

看取りとしての終わり

最も多いのは、介護が医療や看取りへと移行し、最終的に役割が終わるケースです。この段階では、家族の関わり方も大きく変わります。

施設移行による区切り

在宅介護から施設介護へ移ることで、「介護が終わった」と感じる人もいます。実際には支え続けていても、日常の負担が軽減されるためです。

介護の役割が変わるタイミング

要介護者の状態変化により、家族の役割が見守り中心になることもあります。これも一つの区切りと言えます。

介護の終わりは、ある日突然はっきり訪れるというより、関わり方が少しずつ変わっていく中で、気づかないうちに越えているものなのかもしれません。


終わりが見えない不安とどう向き合うか

「何年続くか」より「次の1年」を考える

何年先までを考えるより、「この1年をどう乗り切るか」に視点を置くほうが、現実的で心の負担が軽くなります。

介護を人生の全てにしないための視点

介護は大切ですが、人生の一部です。仕事や自分の時間を守ることは、決してわがままではありません。


よくある質問(Q&A)

Q:親の介護は10年以上続くこともありますか?
A:あります。特に認知症が主な原因で、在宅介護を長く続けた場合は、10年以上になるケースも見られます。ただし、これは決して多数派というわけではありません。

多くの場合、介護が長期化する背景には「認知症」「在宅中心」「家族介護の比重が高い」といった条件が重なっています。数字だけを見て過度に不安になる必要はなく、状況によって長さは大きく変わると理解しておくことが大切です。ただし、必ずそうなるわけではありません。

Q:介護がいつ終わるか、医師やケアマネに聞いていいのでしょうか?
A:問題ありません。むしろ、早めに相談することで選択肢が広がります。

「いつ終わりますか?」と聞くのが難しい場合は、「今後、どんな段階が考えられますか」「これから起こりやすい変化は何ですか」といった聞き方でも十分です。見通しを共有してもらうことで、仕事や生活の調整、サービス選択がしやすくなります。

Q:自分が限界になる前に考えるべきことは?
A:サービスの追加や施設利用を含め、「家族だけで抱え込まない選択」を早めに検討することです。

限界を感じることは、決して弱さや失敗ではありません。むしろ、早めに手を打つことで、結果的に介護を続けやすくなり、自分自身の生活も守ることにつながります。


まとめ

  • 介護の期間には目安はあるが、個人差が非常に大きい
  • 制度や選択によって、見通しは持てる
  • 不安は情報と準備で軽くできる

最後に、ケアマネジャーへ連絡する際の簡単な進め方を補足します。

まだ要介護認定前・介護の初期段階の場合は、いきなり施設や事業所に連絡する必要はありません。まずは地域包括支援センターが相談窓口になります。
地域包括支援センターは、市区町村ごとに必ず設置されている介護保険の入口です。意外と知られていませんが、相談は無料で、予約なしで対応してもらえることも多くあります。

「親の介護が始まりそうで、今後の見通しを知りたい」と伝えれば、状況に応じて必要な説明を受けられ、必要があればケアマネジャーにつないでもらえます。

一度で結論を出そうとせず、「情報を整理する相談」と考えることが、無理なく一歩を踏み出すコツです。