はじめに

親の介護が始まったとき、多くの人が「これで合っているのだろうか」と迷います。正解が見えないまま、目の前のことに必死で対応しているうちに、あとから「別の選択もあったかもしれない」と後悔することも少なくありません。

結論から言うと、親の介護で後悔しやすいのは、知識不足よりも「思い込み」や「真面目さ」が原因になる判断です。よくある失敗をあらかじめ知っておけば、途中からでも立て直すことは十分に可能です。

この記事では、親の介護でやってはいけないこと5つを具体例とともに整理し、後悔を減らすための現実的な考え方を解説します。(下記の注意点としてまとめています)

  1. 家族だけで抱え込む
  2. 親の希望をそのまま受け入れすぎる
  3. 介護サービスを使わずに我慢する
  4. 「いつまで続くか」を考えずに始める
  5. 自分の生活を犠牲にし続ける

わたしは介護士の経験があり、介護現場や家族介護の相談でよく見聞きするケースをもとにまとめています。すべての家庭に当てはまる正解ではありませんが、判断に迷ったときの整理材料として役立ててもらえたらと思います。


親の介護で「やってはいけないこと」はなぜ起きるのか

介護の失敗というと、「無知だったから」「調べなかったから」と思われがちですが、実際はそう単純ではありません。

多くの場合、原因は次のようなものです。

  • 昔の介護観(家族がみるのが当たり前)に無意識に縛られている
  • 親の状態が急に変わり、考える余裕がない
  • 真面目で責任感が強く、弱音を吐けない

つまり、誰でも陥りやすい状況の中で起きています。だからこそ「やってはいけない判断」を知ることが、予防になります。


やってはいけないこと① 家族だけで抱え込む

なぜ後悔につながるのか

介護は短距離走ではなく、長距離走になりやすいものです。最初は気力で乗り切れても、体力や精神力はある日突然限界を迎えます。

家族だけで抱え込むと、

  • 疲労が慢性化する
  • 感情的になりやすくなる
  • 親との関係がぎくしゃくする

といった悪循環に陥りやすくなります。

実際によくあるのは、

  • 介護が始まり、通院の付き添いや見守りが増える
  • 仕事や家事との両立が少しずつ苦しくなる
  • 「今さら相談するほどでもない」と我慢を重ねる
  • 気づいたときには心身ともに限界に近づいている

という流れです。

よくある判断例

  • 「まだ大丈夫」と相談を先延ばしにする
  • 外部に頼ることを「手抜き」「冷たい」と感じてしまう

しかし、早めに人の手を借りたほうが、親にも穏やかに接し続けられるケースは多くあります。抱え込まないことは、決して無責任ではありません。


やってはいけないこと② 親の希望をそのまま受け入れすぎる

表面的な希望と本音のズレ

「施設には入りたくない」「他人に世話されたくない」という言葉は、介護の現場でよく聞かれます。しかし、その背景には不安や恐れが隠れていることも少なくありません。

親の言葉をそのまま受け取るだけでは、安全面や家族の負担が見えなくなることがあります。

家族が調整役になる必要性

大切なのは、希望を尊重しつつも、

  • 安全
  • 継続性
  • 家族全体の生活

を含めて判断することです。家族は「希望をかなえる役」ではなく、「状況を調整する役割」を担っています。


やってはいけないこと③ 介護サービスを使わずに我慢する

介護保険は“最後の手段”ではない

介護保険サービスは、状態が重くなってから使うものだと思われがちですが、実際は初期段階から利用してよい制度です。

早めに使うことで、

  • 家族の負担を分散できる
  • 親が社会とのつながりを保てる
  • 状態の変化に気づいてもらえる

といったメリットがあります。

使わなかった場合のリスク

我慢を続けると、家族関係が悪化したり、共倒れになるリスクが高まります。「限界になってから」では、選択肢が狭まることもあります。


やってはいけないこと④ 「いつまで続くか」を考えずに始める

介護は短期で終わらないケースが多い

「数か月だけ」「一時的なもの」と考えて始めた介護が、数年単位になることは珍しくありません。特に、状態がゆっくり変化するケースでは、終わりが見えにくくなります。

要介護度は、

  • 改善することもあれば
  • 少しずつ進行することもあり
  • 一時的に安定することもある

など、一定ではありません。そのため、短期前提で生活を組み立ててしまうと、後から無理が生じやすくなります。

見通しを立てないことの問題

見通しを立てずに介護を始めると、

  • 仕事との両立が難しくなる
  • 収入や支出のバランスが崩れる
  • 家族の役割分担があいまいなまま続く

といった問題が後から表面化します。

最初から完璧な計画は必要ありませんが、「長く続く可能性がある」という前提を持っておくことが、後悔を減らすポイントです。


やってはいけないこと⑤ 自分の生活を犠牲にし続ける

罪悪感から抜けられなくなる構造

「自分だけ楽をしてはいけない」「親を優先するのが当然」という考えは、多くの人が自然に抱きます。しかし、その思いが強すぎると、自分の生活を後回しにする状態が続いてしまいます。

少しずつ、

  • 笑顔が減る
  • イライラしやすくなる
  • 休むことに罪悪感を覚える

といった変化が出てくることもあります。

長期的には親のためにもならない

介護する側が疲れ切ってしまうと、どうしても余裕がなくなります。その結果、言葉がきつくなったり、後悔する場面が増えることもあります。

自分の生活を守ることは、わがままではありません。長く続く介護だからこそ、介護する人自身が無理をしないことが、結果的に親のためにもなります。


後悔しやすい判断に共通する考え方

後悔につながりやすい判断には、次のような共通点があります。

  • 完璧を目指してしまう
  • 昔の価値観をそのまま当てはめる
  • 相談することを「恥ずかしい」や「失敗」と感じる

これらに気づくだけでも、判断は少し楽になります。


途中で気づいても、やり直せる

介護は一度決めたら終わりではありません。途中で見直し、修正するのが前提です。

地域包括支援センターやケアマネジャーなど、無料で相談できる窓口もあります。今のやり方に違和感があれば、切り替えることは決して遅くありません。


よくある質問(Q&A)

Q. すでに家族だけで抱え込んでいます。今さら相談できますか?
A. できます。実際、相談に来る人の多くは、ある程度一人で頑張ったあとに訪れています。 現状を整理するだけでも、負担は軽くなります。むしろ、途中から相談する人のほうが多いです。現状を整理するだけでも、負担は軽くなります。

Q. 親がサービスを嫌がる場合はどうすればいいですか?
A. いきなり説得するより、短時間・部分的な利用から試すと受け入れやすいことがあります。

Q. 後悔しない介護の正解はありますか?
A. 完璧な正解はありません。後悔を減らすコツは、一人で抱え込まないことです。

 

まとめ

  • 親の介護で後悔しやすいのは、真面目さからくる判断
  • 家族だけで背負わないことが、結果的に親を守る
  • 迷ったら「相談する」ことが最初の一歩

今の介護に少しでも迷いがあるなら、立ち止まって見直すことは前向きな行動です。家族だけで抱え込まずに、公的な窓口(地域包括支援センター)や近くの介護施設の相談員に電話して相談してみるのも全く問題ありません。
相談がきっかけで迷いや負担が軽くなることも多くあります。