はじめに

要介護認定を受ける前後で、これまで普通にできていた手続きや契約が、急に難しく感じられることがあります。

認定そのものが問題なのではなく、「本人の判断能力」や「代理手続き」が意識されるようになることが大きな変化です。

この記事では、要介護認定の前後で“できなくなる可能性があること”“難しくなること”を整理し、公共サービス・金融・契約分野につなげて解説します。

この記事でわかること
・要介護認定前後で変わる手続きの考え方
・公共サービスや金融で注意すべき点
・認定前にやっておくと安心な準備


要介護認定とは?前後で何が変わるのか

要介護認定は、「介護保険サービスを利用できる状態かどうか」を判断する制度です。

重要なのは、認定そのものよりも、その後の生活の変化です。

認定前は、原則として本人が自由に契約・手続きを行うことが前提です。しかし、認定後は「本当に本人の意思か」「判断能力に問題はないか」が確認されやすくなります。

とくに金融機関や契約行為では、慎重な対応が増える傾向があります。

認定前後のイメージ比較

項目 認定前 認定後
銀行手続き 本人確認で完了 状況により代理人確認を求められることがある
契約更新 本人署名で可能 判断能力の確認をされる場合がある
公共サービス申請 通常申請 介護保険証の提示や追加書類が必要な場合あり

認定を受けた瞬間に何かが禁止されるわけではありませんが、「確認のステップ」が増えることが実務上の変化です。


公共サービスで難しくなること

福祉サービスの申請

要介護認定後は、自治体の高齢者支援サービスを利用できる可能性が広がります。一方で、申請時に介護保険証や認定通知書の提示が求められることが増えます。

認定前は一般高齢者向けサービスとして利用できていたものが、認定後は制度区分が変わる場合もあります。

通院・送迎サービス

自治体によっては、要介護度によって利用条件が変わることがあります。認定前は利用できた送迎サービスが、認定後は介護保険サービスに切り替わるケースもあります。

制度が“有利になる面”と“手続きが複雑になる面”の両方がある点を理解しておくことが大切です。


金融関係で注意すべきこと

銀行口座の手続き

要介護認定を受けている場合、銀行窓口では本人の意思確認がより慎重になることがあります。

たとえば、大きな金額の引き出しや定期預金の解約などでは、
・本人確認の強化
・家族同席の要請
・委任状の提出
を求められる場合があります。

認定を理由に一律で制限されるわけではありませんが、トラブル防止のために確認が厳しくなる傾向があります。

クレジットカードやローン契約

新たな契約や更新手続きでは、健康状態や判断能力が間接的に影響することがあります。

とくに施設入所後や後見制度利用中の場合は、本人単独での契約が難しくなることもあります。


契約・名義変更で難しくなること

賃貸契約の更新

認知症の診断がある場合や判断能力に疑義がある場合、家主側が代理契約を求めることがあります。

家族が連帯保証人になっていない場合は、更新時に話し合いが必要になることもあります。

公共料金・保険の手続き

電気・ガス・水道の名義変更や口座変更は、基本的には可能です。しかし、施設入所など生活環境が変わると、名義や支払い方法の見直しが必要になります。

生命保険や医療保険では、請求手続きを家族が行う場面も増えるため、書類の保管場所や契約内容の共有が重要になります。


本人申請が難しくなった場合の対応

代理人対応

判断能力が低下した場合、家族が代理人として手続きを行うことになります。その際に必要なのが、
・委任状
・本人確認書類
・場合によっては診断書
です。

成年後見制度

判断能力が十分でないと判断された場合、成年後見制度を利用することになります。

後見人が選任されると、財産管理や契約行為は原則として後見人が行います。これは本人を守るための制度ですが、手続きは複雑で時間もかかります。

そのため、「認定を受けたらすぐ後見制度」ではなく、段階的な検討が現実的です。


認定前にやっておきたい準備

要介護認定を受ける前後で慌てないために、次の準備が有効です。

・銀行口座や契約内容の一覧を作る
・保険証券や重要書類の保管場所を共有する
・公共料金の支払い方法を確認する
・家族間で緊急連絡先を整理する

認定後に困るケースの多くは、「情報が分からない」ことから始まります。

早い段階で整理しておけば、手続きは格段に楽になります。


実際に困りやすい場面(状況別整理)

要介護認定の前後で「困った」と感じやすいのは、制度の名称ではなく“生活の場面”です。状況別に整理すると、変化が見えやすくなります。

困る場面 認定前 認定後に起こりやすいこと
親が急に入院した 本人が銀行や保険手続きを進められる 家族が代理で動く必要が出る。委任状や確認書類を求められることがある
施設に入ることになった 口座・契約はそのまま継続 名義変更・引き落とし口座変更・解約手続きが一気に発生する
高額出金が必要 通常の本人確認で完了 「本人の意思確認」がより慎重になる場合がある
クレジットカード更新 通常更新 健康状態や生活状況によっては更新不可・利用停止のケースもある

このように、認定後は“できなくなる”というよりも、「確認が増える」「代理が必要になる」場面が増えることが実務上の変化です。


よくある質問(Q&A)

Q1. 要介護認定を受けると、銀行口座は凍結されますか?

いいえ、要介護認定を受けただけで口座が凍結されることはありません。
ただし、判断能力に不安があると銀行側が判断した場合は、高額出金などで確認が強化されることがあります。

Q2. 要介護認定を受けたら、すぐ成年後見制度を使う必要がありますか?

必ずしも必要ではありません。
本人の判断能力が保たれている間は、委任状などで対応できるケースも多くあります。段階的に検討することが現実的です。

Q3. クレジットカードやローンはすぐ使えなくなりますか?

認定そのものを理由に即停止されることは通常ありません。ただし、施設入所や収入状況の変化により、更新や新規契約が難しくなる場合があります。

Q4. 家族はいつから代理準備をすべきですか?

認定前の段階から、口座・保険・契約一覧を整理しておくことが理想です。実際に手続きが必要になってからでは時間的余裕がなくなりやすいためです。


まとめ

要介護認定を受けたからといって、急に何もできなくなるわけではありません。

しかし、金融・契約・公共サービスでは“確認が厳しくなる”“代理人対応が増える”という変化が起きやすくなります。

大切なのは、

  1. 認定前から情報を整理しておくこと
  2. 家族と共有しておくこと
  3. 必要に応じて制度を段階的に利用すること

少し早めに備えておくだけで、認定後の生活は落ち着いたものになります。

介護の現場では、「もっと早く整理しておけばよかった」という家族の声を本当によく耳にします。制度が難しいのではなく、情報が分からないことが不安を大きくします。だからこそ、認定前の準備は“安心のための時間づくり”でもあります。

制度を恐れるのではなく、上手に活用する。その視点が、これからの安心につながります。