はじめに

親が元気に暮らしているうちは、介護の話題を出すことに抵抗を感じる方が多いかもしれません。縁起でもない、まだ早い、そう思って先送りにしてしまいがちです。

しかし実際には、介護はある日突然始まることが少なくありません。そのときになって初めて「話しておけばよかった」と後悔する家族も多いのが現実です。

結論から言うと、介護が始まる前に家族で話しておきたいことは、完璧に決める必要はありません。方向性を共有しておくだけでも、その後の迷いやトラブルは大きく減ります。

この記事では、介護が始まる前に家族で話しておかないと後悔しやすい3つのポイントを、できるだけ分かりやすく整理します。

この記事でわかること

  • 介護が始まる前に、家族で最低限話しておきたいこと
  • 話しておくだけで、後の負担や後悔がどう変わるのか
  • 重くなりすぎない、現実的な話し合いの考え方

介護が始まる前に話しておかないと後悔しやすい3つのこと

介護前に話しておきたい内容は、大きく分けると次の3つです。

  1. お金・費用のこと
  2. 介護の役割分担のこと
  3. 本人の希望・価値観のこと

どれも難しい話題ですが、避け続けると後でより大きな負担になります。順番に見ていきましょう。


① お金・費用のこと(介護費・生活費・制度)

介護が始まると、多くの家庭で最初に直面するのがお金の問題です。

在宅介護であっても、介護サービスの自己負担分、通院費、消耗品、場合によっては住宅改修費などがかかります。施設介護になると、さらに費用は分かりにくくなります。

よくあるのが、

  • 年金だけで足りると思っていたが、実際は不足した
  • 家族の誰かが立て替え続け、負担が偏った
  • お金の話を避けていたため、後から不満が噴き出した

といったケースです。

たとえば、介護が始まった当初は「年金の範囲で何とかなるだろう」と考えていたものの、デイサービスの利用や通院の付き添い、紙おむつなどの日用品が重なり、想定以上の出費になることがあります。

その結果、特定の家族が立て替えを続ける形になり、「いつまで続くのか分からない」「この負担は公平なのか」といった不満が、後になって表面化することも少なくありません。

介護前の段階で細かい金額まで決める必要はありませんが、

  • 年金や貯蓄はどの程度あるのか
  • 介護保険で何が使えそうか
  • 家族がどこまで金銭的に関われるか

この「方向性」だけでも共有しておくと、後の話し合いがスムーズになります。


② 介護の役割分担のこと(誰が・どこまで関わるか)

介護は一人で背負うものではありません。しかし実際には、特定の家族に負担が集中してしまうことが多いのも事実です。

よくあるのは、

  • 近くに住んでいる人がすべて引き受ける
  • 長男・長女だからという理由で任される
  • 「そのうち手伝う」という言葉だけで話が進まない

といった状況です。

介護前に話しておきたいのは、「誰が主に介護するか」だけではありません。

  • 通院の付き添い
  • 役所やケアマネジャーとの連絡
  • 緊急時の対応
  • 定期的な見守り

このように役割を分けて考えると、関わり方の幅が見えてきます。

最初から完璧に決め切る必要はありません。たとえば、

  • まずは月1回の様子確認を誰がするか
  • 連絡窓口を1人決める
  • 緊急時の連絡順だけ決めておく

といった小さな取り決めでも十分です。

大切なのは、できること・できないことを正直に出すことです。最初に無理をすると、途中で続かなくなり、結果的に家族関係が悪くなってしまうこともあります。


③ 本人の希望・価値観のこと(どんな暮らしを望むか)

介護の判断で家族が最も悩むのが、「本人は本当はどうしたかったのか分からない」という状況です。

  • できるだけ自宅で暮らしたいのか
  • 状況次第では施設も受け入れたいのか
  • 医療や延命についての考え方

これらは、元気なうちでなければ聞きにくい話でもあります。

重い話題として切り出す必要はありません。たとえば、

  • 「もし通院が大変になったら、どうするのが楽かな?」
  • 「家と施設だったら、どっちが安心できそう?」

といった、暮らしの延長線上の聞き方でも十分です。

必ずしも書面に残す必要はありませんが、家族が本人の考えを知っているだけで、いざというときの迷いは大きく減ります。

「本人がそう言っていた」という共通認識があるだけで、家族間の衝突を防げるケースも少なくありません。

多くの親は、「迷惑をかけたくない」「まだ先の話だ」と感じています。縁起でもない話として避けたい気持ちも自然なものです。それでも、家族が困らないための話であれば、少しずつ耳を傾けてくれる方も少なくありません。


よくある後悔パターン

実際に多い後悔として、次のような声があります。

  • お金の話をしておらず、兄弟で不満が出た
  • 役割分担が曖昧で、介護疲れが一人に集中した
  • 本人の希望が分からず、決断のたびに迷い続けた

これらは、事前に少し話しておくだけで避けられた可能性が高いものです。


介護前に話していた場合/話していなかった場合の違い(比較)

介護が始まる前に家族で話していたかどうかで、その後の状況は大きく変わります。違いを整理すると、次のようになります。

項目 介護前に話していた場合 話していなかった場合
お金の判断 方向性が共有されており迷いが少ない その場しのぎになり不満が出やすい
役割分担 無理のない範囲で分担しやすい 特定の人に負担が集中しやすい
施設・医療の判断 本人の意向を思い出して決められる 家族が迷い続けやすい
家族関係 話し合いの土台があり衝突が少ない 後から揉めやすい
精神的負担 「これでよかった」と思いやすい 後悔が残りやすい

よくある質問(Q&A)

Q1. 親が介護の話をしたがらない場合はどうすればいいですか?

無理に話を進める必要はありません。体調や生活の延長として、軽い話題から少しずつ触れるのがおすすめです。一度で結論を出そうとせず、「今日はここまで」で終えても問題ありません。

Q2. 兄弟が遠方に住んでいる場合、役割分担はどう考えればいいですか?

距離がある場合でも、連絡窓口や情報整理、金銭管理など、直接介護以外で関われる役割はあります。物理的な距離だけで負担を判断しないことが大切です。


まとめ

介護が始まる前に家族で話しておきたいのは、次の3つです。

  • お金・費用のこと
  • 介護の役割分担のこと
  • 本人の希望・価値観のこと

完璧に決める必要はありません。「まだ早い」と思える今こそ、最も話しやすいタイミングでもあります。

何も起きていないうちに少しだけ話しておくことが、将来の後悔を減らし、家族全員を守ることにつながります。