はじめに

「親の介護がつらい」と感じて、このページにたどり着いた方は、きっと今、心も体もいっぱいいっぱいなのだと思います。介護がしんどいと感じるたびに、「こんなふうに思う自分は冷たいのではないか」「もっと優しくできない自分はダメなのではないか」と、自分を責めてしまっていないでしょうか。

結論からお伝えします。親の介護がつらいと感じることは、決しておかしいことではありません。 そして、その気持ちを理由に自分を責める必要もありません。

この記事では、介護の現場を見てきた立場から、家族介護がつらくなりやすい理由を整理し、気持ちが少し楽になる考え方をお伝えします。

この記事でわかること

  • 親の介護で「つらい」「いらいらする」と感じてしまう理由
  • 自分の親だからこそ、うまく介護できなくなる背景
  • 家族が自分を責めなくていい理由と、気持ちを守る距離の取り方

親の介護が「つらい」と感じてしまう背景

生活が一気に変わることへの戸惑い

介護が始まると、生活は想像以上に急変します。

・自分の時間がほとんどなくなる
・常に親の体調や様子が気にかかる
・仕事や家庭との両立が難しくなる

こうした変化は、誰にとっても大きな負担です。
にもかかわらず、介護は「突然始まる」ことが多く、心の準備ができないまま日常が塗り替えられてしまいます。

つらくなるのは、当然の反応です。

「家族なのだから頑張らなければ」という思い込み

家族介護をしている方の多くが、無意識のうちにこんな考えを抱えています。

・家族だからできて当たり前
・他の人はもっと頑張っているはず
・弱音を吐くのは甘え

この思い込みが、つらさをさらに強くします。
本当は限界が近づいているのに、「まだ大丈夫」「自分が我慢すればいい」と、気持ちにフタをしてしまうのです。


現場から見える「家族が自分を責めてしまう瞬間」

介護が始まった直後に多いケース

介護の現場でよく見かけるのは、
介護が始まって間もない家族ほど、自分を責めやすいという現実です。

・情報が少ないまま判断を迫られる
・何が正解かわからない
・親の状態が日に日に変わる

この状況で冷静でいられる人はいません。
それでも家族は「自分の判断が悪かったのでは」「もっとできたのでは」と、すべてを自分の責任として抱え込んでしまいます。

家族だけで抱え込んでしまう流れ

介護サービスに頼ることをためらい、
「まずは家族で何とかしよう」と頑張りすぎるケースも多くあります。

・他人に任せるのは申し訳ない
・まだ使うほどではない気がする
・親が嫌がるかもしれない

その結果、相談できる人がいなくなり、孤立感が強まります。
孤立した状態では、いらいらや自己嫌悪が膨らみやすくなります。


介護職員は家族をどう見ているか

現場では家族を責める目線はほとんどない

「家族なのに、どうしてできないのか」
「もっと頑張れるはずなのに」

介護職員が、家族をそんなふうに見ていることは、実はほとんどありません。

現場で多く感じるのは、
家族はすでに十分すぎるほど頑張っているということです。

むしろ、
・感情
・責任感
・罪悪感

これらを一人で背負い込んで、限界まで無理をしている家族がとても多いのです。

介護サービスは「家族を休ませるため」にもある

介護サービスは、親のためだけにあるものではありません。

家族が倒れてしまえば、介護は続きません。
家族が少し休み、気持ちを立て直すことが、結果的に本人のためになります。

現場では、「家族が無理をしすぎないこと」が、良い介護につながると考えられています。


自分の親だからこそ、いらいらしてしまう理由

家族と介護職員では「立ち位置」が違う

よく聞く声に、こんなものがあります。

「他人の介護士さんはうまく対応できているのに、自分は親にいらいらしてしまう」
「自分がいやになる」

これは、能力の差ではありません。
立ち位置の違いです。

家族は、
・長年の親子関係
・過去の感情
・期待や甘え

こうしたものをすべて抱えたまま向き合います。
一方、介護職員は「役割」として関わり、一定の距離を最初から保っています。

一時的に「介護職員的な立ち位置」を借りるという考え方

ここで、家族介護と介護職員の違いを、いったん整理してみます。

家族介護と介護職員の「立ち位置の違い」

視点 家族としての介護 介護職員としての介護
関係性 親子・長年の関係 役割としての関係
感情の距離 非常に近い 一定の距離がある
期待・甘え 過去の期待が残りやすい 役割の範囲内に限定される
判断の基準 感情が入りやすい 状況・手順を基準に判断
いらいらが出やすい理由 感情と責任を同時に背負う 感情を役割の外に置ける

この違いを見ると、家族が介護でいらいらしてしまうのは、能力や愛情の問題ではなく、立ち位置の問題であることが分かります。

親の介護がつらくなったときは、自分の立ち位置を介護職員側に寄せてみる

親の介護がつらいときは、自分の立ち位置だけを一時的に介護職員側に寄せてみてください。介護の資格や経験がなくても立ち位置を変えることはできます。
それは冷たくすることでも、突き放すことでもありません。感情を少し横に置き、「今は介助する役割として向き合う」と意識するだけでも、関係は少し楽になります。

近すぎず、離れすぎない距離が介護を続けやすくする

我慢し続けることが、良い介護ではありません。

・近すぎて苦しくなったら、少し距離を取る
・感情が荒れそうなら、役割に戻る

この距離調整こそが、家族介護を続けるための現実的な工夫です。


家族が自分を責めなくていい理由

① 介護は一人で背負う前提ではない

介護は、家族・制度・第三者で支えるものです。
一人で完結させる前提そのものが、無理なのです。

② 親を思う気持ちと、つらさは両立する

つらいと感じることは、愛情がない証拠ではありません。
むしろ、それだけ真剣に向き合っている証です。

③ 判断は迷いながら、選び直していい

介護の判断は、一度決めたら終わりではありません。
状況に合わせて、何度でも見直していいのです。


つらさを感じたときの相談先と考え方

「もう限界」と感じてからでは、相談する気力すら残らないことがあります。

・地域包括支援センター
・ケアマネジャー

こうした窓口は、困り切る前に使っていい場所です。
早めに相談することで、選択肢は広がります。


Q&A|よくある不安とその考え方

Q1. 親にいらいらしてしまうのは、愛情が足りないからでしょうか?

A.
いいえ、そうではありません。
いらいらするのは、感情が近すぎる関係で、責任や期待を一人で背負っているからです。愛情があるからこそ、うまくできない自分を責めてしまう人も多いのです。

Q2. 他人の介護士さんのほうがうまく対応できているのを見ると、自分が情けなくなります。

A.
介護職員は「役割」として関わり、最初から一定の距離を保っています。それは能力の差ではなく、立ち位置の違いです。家族が同じようにできなくても、当然のことです。

Q3. 介護サービスに頼るのは、家族として無責任でしょうか?

A.
無責任ではありません。現場では、家族が無理をしすぎないことが、結果的に本人のためになると考えられています。頼ることは「逃げ」ではなく、介護を続けるための選択です。

Q4. 自分の気持ちが限界に近いとき、まず何をすればいいですか?

A.
「もう少し頑張ってから」ではなく、早めに誰かに話すことです。地域包括支援センターやケアマネジャーは、困り切る前に使っていい場所です。相談すること自体が、介護の一部です。


まとめ

親の介護がつらいと感じるのは、ごく自然な反応です。

現場では、家族を責めている人はいません。むしろ、「よくここまで頑張ってきた」と感じることのほうが多いのです。

介護は、続けるために頼っていい。
そして、自分を責めすぎないでほしい。

この記事が、少しでも気持ちを軽くするきっかけになれば幸いです。